豆知識

消毒用アルコールの違いって何? お高い消毒液の謎

コロナ禍となってからアルコール消毒液に興味を持ち、ドラッグストアを覗いてみた人も多いでしょう。そして疑問に思ったはずです。「どうしてこんなに値段が違うんだろう?」と。
確かに消毒用アルコールと言っても、200円台から1000円ほどと幅広い価格帯のものがあります。この商品達には値段以外にはどんな差があるのか?
今回は外からはわかりにくい、お高い消毒液の謎について解説していきます。

まず一つ、お高い消毒液の例を挙げるとしましょう。「消毒用エタノール液IP ケンエー」です。ドラッグストアにいけばどこでも売っているであろう、青いボトルのあれです。

消毒用エタノール液IP | 健栄製薬株式会社 | 感染対策・手洗いの消毒用エタノールのトップメーカー (kenei-pharm.com)より引用


これはスプレー版なら1000円ほどとなる、結構なお値段の品です。売っていても手が伸びなかった方も多いのではないでしょうか。

安いものとの違いはズバリ、れっきとした医薬品であることです。

消毒液が医薬品というとピンとこないかもしれませんが。本体に書いてある(上の写真では見えません)通り「第三類医薬品」に分類されています。(医療用ではなく一般用医薬品のくくりです)

日本薬局方というのがありまして、これに収録されているものは医薬品であるといわゆる「医薬品医療機器等法」に定められています。

この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。

 日本薬局方に収められている物

 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)

 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索昭和三十五年法律第百四十五号より引用

現在公示されている第十八改正日本薬局方の591ページに、消毒用エタノールとして収録されています。当然ながら濃度までキッチリ定められており、以下のように書かれています

本品は15℃でエタノール(C2H6O:46.07) 76.9 ~ 81.4
vol%を含む(比重による).

000788360.pdf (mhlw.go.jp)第十八改正日本薬局方より引用

「消毒用エタノール液IP ケンエー」もこの規定に沿っており、組成は以下のようになります。

エタノール(C2H6O)76.9~81.4vol%を
含有する。
添加物としてイソプロパノールを含有す

る。

https://www.kenei-pharm.com/cms/wp-content/uploads/2016/11/interview1291800710.pdf消毒用エタノール液 IP ケンエーの医薬品インタビューフォームより引用

ちなみに「消毒用エタノール液IP ケンエー」のIPは何を意味するのかというと、上記の組成にある「イソプロパノール」のことです。

このイソプロパノールが何のために添加されているのかというと、ズバリ安くするため。イソプロパノールが添加されていれば、酒税が免税されるため、単なる消毒用エタノール液よりもお安くなるのです。

消毒用エタノール「ケンエー」 | 健栄製薬株式会社 | 感染対策・手洗いの消毒用エタノールのトップメーカー (kenei-pharm.com)より引用

実際に比較すると、イソプロパノールが含まれていない消毒用エタノール(500㎖)1330円に対し、消毒用エタノール液IP(同じく500㎖) は955円とかなりお安くなっています(いずれも希望小売価格)。なお、IPが効力において通常の消毒用エタノールに劣るといったことはないことが確認されていますので、安心してIPを選ぶことができます。

いかがでしたか?身近に売っているものではありますが、れっきとした医薬品であることに驚いた方もいたのではないでしょうか。アルコール消毒を売り文句とするものは「指定医薬部外品」に分類されているものもあります。指定医薬部外品については別のコラムでまとめる予定なので、良ければそちらもお読みいただければ幸いです。